酢酸−リン酸アニオンクラスターの分子間水素結合における核の量子揺らぎの効果に関する理論的研究 [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 15, 203-209, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.15, 203-209, by J-STAGE]
<Title:> 酢酸−リン酸アニオンクラスターの分子間水素結合における核の量子揺らぎの効果に関する理論的研究
<Author(s):> 川島 雪生, 澤田 啓介, 中嶋 隆人, 立川 仁典
<Corresponding author E-Mill:> yukio.kawashima(at)riken.jp
<Abstract:> High Performance Computerで効率の高いシミュレーションを実行できる,分子科学計算ソフトウェアNTChemと経路積分分子動力学(PIMD)法を統合した階層的 並列プログラムプラットフォームを用いることにより,低障壁水素結合(LBHB)の存在が示唆されているperiplasmic phosphate binding protein (PPBP)のモデル分子である酢酸−リン酸アニオンクラスターの分子間水素結合における原子核の量子揺らぎの効果を明らかにした.モデル分子における一 つの水素結合を形成する配置を解析したところ,原子核を古典的な質点で取り扱った古典シミュレーションでは,プロトンは水素結合の両端に局在化 し,通常の水素結合と同様の振る舞いを示した.一方,原子核の量子揺らぎの効果を取り込んだ量子シミュレーションでは,プロトンが水素結合の中央 に存在する確率が高くなった.酢酸−リン酸アニオンクラスターの分子間水素結合は,LBHBと同じような傾向を示した.
<Keywords:> Low barrier hydrogen bond (LBHB), First principles calculation, Nuclear quantum effect, Path integral molecular dynamics (PIMD) simulation, Periplasmic phosphate binding protein (PPBP)
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/15/5/15_2016-0043/_article/-char/ja/

カーボンナノウォールの電子状態と水素吸着 [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 15, 177-183, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.15, 177-183, by J-STAGE]
<Title:> カーボンナノウォールの電子状態と水素吸着
<Author(s):> 木下 郁雄, 北 幸海, 立川 仁典, 橘 勝
<Corresponding author E-Mill:> ikinoshi(at)yokohama-cu.ac.jp
<Abstract:> カーボンナノウォール(CNW)の構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観測し,CNWの結晶子間の境界領域に折れ曲がったグラファイト構造があることがわ かった.CNWの電子構造を紫外光電子分光(UPS)で測定し,高配向性グラファイト(HOPG)と比較した.HOPGと同様にCNWでも層間バ ンドが観測された.一方,カーボンナノチューブに見られるσ-π混成バンドが観測された.昇温脱離法(TPD)の測定から,重水素がCNWの主に 境界領域に吸着することがわかった.CNWの境界領域の1つのモデルとして折れ曲がったコロネン分子を用いて水素吸着に関して第一原理計算をおこ なった.オントップサイトとホローサイトどちらも折れ曲げ角が大きくなるほど水素の吸着エネルギーが大きくなった.NBO解析から吸着サイトの炭 素の結合がsp2からsp3に変化するためだとわかった.
<Keywords:> Carbon Nano-wall, Electronic Structure, Hydrogen Adsorption, First-principles calculation
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/15/5/15_2016-0016/_article/-char/ja/

プロトンの水和自由エネルギー:酸解離定数および標準水素電極電位の高精度計算 [Published online in advanced , by J-STAGE]

[Advanced Published online Journal of Computer Chemistry, Japan, by J-STAGE]
<Title:> プロトンの水和自由エネルギー:酸解離定数および標準水素電極電位の高精度計算
<Author(s):> 松井 亨, 喜屋武 茜, 庄司 光男, 重田 育照
<Corresponding author E-Mill:> shigeta(at)ccs.tsukuba.ac.jp
<Abstract:> 本総説では,分極誘電体モデルと量子化学計算に基づく酸解離定数(pKa) の計算手法について述べる.この手法では,参照分子に対して計算により得られる自由エネルギー差と実験により得られるpKa値 から官能基毎の線形関係を導くことで,アミノ酸の側鎖のpKaの半定量的な計算が可能になる.ペプチド3量 体の計算においては,周囲のアミノ酸の水素結合の効果によってpKaが単量体とくらべ大きく(3 pKa単 位)異なることがわかる.また本手法は標準水素電極電位の計算にも適用可能であり,いくつかの酸化還元反応の誤差はCCSD (T)/aug-cc-pVDZでは0.1V以内であり,B3LYPでも同程度の精度で酸化還元電位が計算される.
<Keywords:> Hydration free energy, pKa, Proton, Solvation model
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/advpub/0/advpub_2016-0022/_article/-char/ja/

多成分密度汎関数理論のための電子-核相関汎関数の開発 [Published online in advanced , by J-STAGE]

[Advanced Published online Journal of Computer Chemistry, Japan, by J-STAGE]
<Title:> 多成分密度汎関数理論のための電子-核相関汎関数の開発
<Author(s):> 宇田川 太郎, 常田 貴夫, 立川 仁典
<Corresponding author E-Mill:> udagawa(at)gifu-u.ac.jp
<Abstract:> 最も軽い水素の原子核の運動においては,量子効果が顕著に現れる. 原子核運動の量子効果を直接的に取り込んだ理論として多成分分子理論を開発してきた.また近年では,計算時間のかからない密度汎関数理論が分子理論の中心 理論となりつつある.我々は,多成分密度汎関数理論のための簡便な電子-核相関汎関数を開発した. この汎関数は,相関波動関数から簡単かつ正当な物理条件のみにもとづいて導出した汎用性の高い汎関数であり,パラメータを1つしか含まない.にもかかわら ず,水素原子を含む小分子の電子-プロトン相関エネルギーを化学的精度(1 2 kcal/mol程度の誤差)で再現する.
<Keywords:> Multicomponent density functional theory, electron-nucleus correlation functional, many-body effect, H/D isotope effect, correlations between different elementary particles
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/advpub/0/advpub_2016-0018/_article/-char/ja/

水素結合−π電子系相関型有機伝導体の開発とその水素/重水素同位体効果 [Published online in advanced , by J-STAGE]

[Advanced Published online Journal of Computer Chemistry, Japan, by J-STAGE]
<Title:> 水素結合−π電子系相関型有機伝導体の開発とその水素/重水素同位体効果
<Author(s):> 上田 顕, 森 初果
<Corresponding author E-Mill:> a-ueda(at)issp.u-tokyo.ac.jp
<Abstract:> プロトン(水素原子)と電子の相関現象は,生体系や各種の化学反応において重要な役割を担っている.その一方で,固体結晶中においてこのような相関現象は これまでほとんど見つかっていなかった.筆者らは,有機伝導体を舞台とした独自の物質開発研究を展開し,最近,水素結合中の水素原子ダイナミクス と有機π電子の連動・相関に起因する前例のない大変ユニークな動的現象・機能物性を発見した.本稿では,このπ電子系固体物質における新しい「量 子水素の科学」を物質開発ならびに水素/重水素同位体効果の観点から紹介したい.
<Keywords:> Organic conductors, Materials synthesis, Interplay between hydrogen bonds and π-electron system, Hydrogen/deuterium isotope effect, Phase transition
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/advpub/0/advpub_2016-0015/_article/-char/ja/

固体内及び固体表面上における水素同位体の量子状態 [Published online in advanced , by J-STAGE]

[Advanced Published online Journal of Computer Chemistry, Japan, by J-STAGE]
<Title:> 固体内及び固体表面上における水素同位体の量子状態
<Author(s):> 中西 寛
<Corresponding author E-Mill:> nakanishi(at)akashi.ac.jp
<Abstract:> これまで,固体中および固体表面上における軽元素原子の量子状態を第一原理的に計算する手法を開発してきた.特に対象となる原子は,軽水素(H),重水素 (D),三重水素(T),ミュオニウム(Mu)等の水素同位体である.本稿では現状の計算手法とそれを用いたいくつかの計算結果を紹介する.この 手法による計算結果は,定量的に実験結果と良い一致を示しており,材料中水素の特性解析に有用である.水素同位体原子の量子状態は,学術的興味だ けでなく,今後の水素関連技術の材料開発に,必須の知見になると考えられる.
<Keywords:> Hydrogen isotope (Mu, H, D, T), Quantum states of atom motion, The first principles calculation, μSR, Hyperfine interaction, Positive muon, Proton, Muonium
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/advpub/0/advpub_2016-0023/_article/-char/ja/

SCCJ Caf Season 5 生命現象の分子科学(3)「量子ビーム 軌道放射光-X線吸収分光法-」 [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 15, A42-A46, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.15, A42-A46, by J-STAGE]
<Title:> SCCJ Caf Season 5 生命現象の分子科学(3)「量子ビーム 軌道放射光-X線吸収分光法-」
<Author(s):> 山口 峻英, 高妻 孝光
<Corresponding author E-Mill:> takamitsu.kohzuma.qbs(at)vc.ibaraki.ac.jp
<Abstract:> 最初のシンクロトロン放射光が観測されてから70年近くが経過した.今日では,加速器の向上とともに放射光光源の性能が上がり,量子ビームによって様々な 物質 生命研究が展開されている.本稿では,加速器,そして放射光光源の発展を紹介し,金属タンパク質科学への応用という観点から,特にX線吸収分光法および計 算機科学との関係について紹介する.
<Keywords:> Quantum Beam, Synchrotron Radiation, X-ray Absorption Spectroscopy, Metalloprotein
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/15/4/15_2016-0050/_article/-char/ja/

電子を描く(7) — Z 軸を含む平面節面による整理 [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 15, A47-A50, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.15, A47-A50, by J-STAGE]
<Title:> 電子を描く(7) — Z 軸を含む平面節面による整理
<Author(s):> 時田 澄男
<Corresponding author E-Mill:> tokita(at)apc.saitama-u.ac.jp
<Abstract:> 水素原子の波動方程式を解いて得られる極座標で表される原子軌道を実数関数化し,球殻状の節面を持たない軌道の平方を,ガラスブロック内に実3次元で彫刻 した.Z 軸を含む平面節面の規則的な変化が観察できた.
<Keywords:> Electron, Visualization, Hydrogen atom, Atomic orbital, Imaginary wave function, Real wave function, 1s orbital, 2p orbital, 3d orbital, 4f orbital, 5g orbital, 6h orbital, Planar and conical node symmetrical about z axis, Planar nodes containing z axis, Isosurface, Real 3-dimensional representation of an electron
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/15/4/15_2016-0051/_article/-char/ja/

C5Ch5およびC6Ch6 (Ch = S, Se, Te)の分子構造と芳香族性の評価 [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 15, 87-91, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.15, 87-91, by J-STAGE]
<Title:> C5Ch5およびC6Ch6 (Ch = S, Se, Te)の分子構造と芳香族性の評価
<Author(s):> 川田 修太郎, 望月 祐志, 中野 克洋
<Corresponding author E-Mill:> kawada(at)rikkyo.ac.jp
<Abstract:> (CO)nで記されるCO単位の環状重合体であるオキソカーボンは長 年関心を集めてきた.しかし,Oをカルコゲン原子Ch = (S, Se, Te)で置換した擬オキソカーボン類については,これまで系統的に理論計算による検討はなされてはいない.そこで今回,(CCh)n (n = 5,6)についてDFT計算による分子構造の最適化とNICS値の算定を試みた.最適化計算からは,カルコゲンが高周期になるにつれて構造の平面性が増す ことが分かった.NICS値からは,(CTe)6でベンゼンに匹敵する芳香族性が示唆された.
<Keywords:> Oxocarbon, Chalcogen, DFT calculation, NICS evaluation, Aromaticity
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/15/4/15_2016-0042/_article/-char/ja/

Intel Xeon Phi上でのSMASHによる並列化DFT計算の性能評価 [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 15, 92-96, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.15, 92-96, by J-STAGE]
<Title:> Intel Xeon Phi上でのSMASHによる並列化DFT計算の性能評価
<Author(s):> 齊藤 天菜, 望月 祐志, 山崎 大, 石村 和也
<Corresponding author E-Mill:> fullmoon(at)rikkyo.ac.jp
<Abstract:> Intel Xeon Phiプロセッサが科学技術計算用のメニーコアプロセッサとして注目を集めている.私たちは,高い並列性能を持つ分子軌道計算プログラムSMASHを用 い,DFT計算に関して第一世代Phi (Knights Corner)上のネィティブモードで性能評価を行った.その結果,実60コアから論理120コアへ増分したマルチスレッディングの領域でも1.4倍程の 加速が得られることが分かった.これは,第二世代Phi (Knights Landing)でも好ましい性能が得られると期待させるものである.
<Keywords:> Intel Xeon Phi, Many-core, Multi-threads, Parallelized DFT calculations, SMASH program
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/15/4/15_2016-0047/_article/-char/ja/