DFT法による塩化鉄(III)錯体の鉄−配位子間相互作用の解析 [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 16, 1-16, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.16, 1-16, by J-STAGE]
<Title:> DFT法による塩化鉄(III)錯体の鉄−配位子間相互作用の解析
<Author(s):> 陳 奕廷, 陳 皇州, 福田 光完
<Corresponding author E-Mill:> mifukuda(at)hyogo-u.ac.jp
<Abstract:> 八面体構造から四面体構造まで塩素数に応じて構造が変化する塩化鉄(III)錯体に対してDFT法を用いて理論計算を行った.使用した汎関数は BHandHLYP,wB97XD,CAM-B3LYP,LC-wPBEの4種である.基底関数には6-311+G(d,p)あるいは 6-311+G(3df,2pd)を用い,PCM法による水媒体中で計算を行った.4種の汎関数を用いたDFT法は概ね錯体構造をよく再現し た.2原子の塩素が配位した八面体型[Fe(III)Cl2(H2O)4]+cis型 とtrans型の安定性,及び3原子の塩素が配位した三方両錐型の[Fe(III)Cl3(H2O)2] と四面体型の[Fe(III)Cl3(H2O)] の安定性をエネルギー的に比較した.振動計算から得られる配位水分子の伸縮振動の波数の変化を[Fe(III)(H2O)6]3+か ら[Fe(III)Cl3(H2O)]まで調査したところ,八面体型では水分子の減少とともに伸縮 振動は高波数側へシフトし,フリーの単独水分子の伸縮振動に近づく.八面体型では塩素原子の鉄への配位は鉄の極性を低下させ,その結果として水分 子との相互作用を弱めると考えられる.しかし,三方両錐型([Fe(III)Cl3(H2O)2]) から四面体型([Fe(III)Cl3(H2O)])になるにつれ再び伸縮振動はやや低波数側へシ フトした.配位する塩素原子数が同じ3であっても,水分子数が少ないほど鉄との相互作用は強められる.鉄−酸素間距離についても同じ傾向を示し た.
<Keywords:> DFT method, iron(III) chloride complex, infrared stretching frequency, interaction between metal and ligand
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/16/1/16_2016-0049/_article/-char/ja/

計算としての化学反応によるゲルのロコモーション [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 16, 17-21, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.16, 17-21, by J-STAGE]
<Title:> 計算としての化学反応によるゲルのロコモーション
<Author(s):> 吉田 彩乃, 櫻沢 繁
<Corresponding author E-Mill:> sakura(at)fun.ac.jp
<Abstract:> 複雑な実世界に適応するロボットを開発するために,生物の階層性を模倣したシステムが開発されている.しかしそれらのシステム全体を制御するための同期機 構は,コンピュータによる計算によって構成されている.そのアルゴリズムは設計者によってシステムの外部から与えられているため,フレーム問題を 回避できない.フレーム問題を回避するためは,システムの内部から生ずる計算アルゴリズムによってシステムが動作する必要がある.そこで我々は BZ反応が計算として機能することに着目し,BZ反応による自励振動ゲルを用いて,アルゴリズムを与える事無く自発的に一方向の運動を示す化学ロ ボットの開発を目指した.その結果,BZ反応に寄与する物質の拡散速度とゲルの形やサイズのバランスをとることで,内生的に非対称性を作りだすこ とと,その化学反応によって実際にゲルが一方向に蠕動運動することを具体的に示すことに成功した.
<Keywords:> BZ reaction, Self-oscillating gel, Peristaltic motion, Locomotion, Natural computing
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/16/1/16_2017-0004/_article/-char/ja/

WinmostarのMOPAC計算による分子軌道モデルの3Dプリンタ用STLファイルの作成 [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 16, 22-27, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.16, 22-27, by J-STAGE]
<Title:> WinmostarのMOPAC計算による分子軌道モデルの3Dプリンタ用STLファイルの作成
<Author(s):> 吉村 忠与志, 八木 徹, 千田 範夫
<Corresponding author E-Mill:> tadayosi2438(at)yahoo.co.jp
<Abstract:> 分子モデリングソフトウェアには3Dプリンタ用STLファイルを創出するものが開発されていない.そのため,いろいろな機能を付加した研究が進む中 で,Winmostarで作成できるVRML形式ファイルをBlenderでSTLファイルに変換して分子軌道モデルを3Dプリンタで作成するこ とができた.これによって,分子軌道の3Dモデルを簡単に作成できることから,この方面でのますますの利用を期待できる.
<Keywords:> STL conversion from VRML file, Winmostar, Blender, 3D printer, Chemical education, Molecular orbital
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/16/1/16_2016-0046/_article/-char/ja/

散逸粒子動力学におけるシリカ−脂質膜界面付近の水の取扱い [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 16, 28-31, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.16, 28-31, by J-STAGE]
<Title:> 散逸粒子動力学におけるシリカ−脂質膜界面付近の水の取扱い
<Author(s):> 土居 英男, 奥脇 弘次, 望月 祐志, 小沢 拓
<Corresponding author E-Mill:> hideo-doi(at)rikkyo.ac.jp
<Abstract:> 散逸粒子動力学(DPD: Dissipative Particle Dynamics)法を用いたシミュレーションは生体膜などの幅広い分野で用いられている.従来,このようなDPD シミュレーションでは,バルクの水と界面付近の水を同じように扱う場合がほとんどであった.しかし,こうしたやり方では系の性質を必ずしも忠実に再現して いるとはいえない.界面付近の水分子の性質とバルクの水分子の性質がかなり異なったものであるという実験的,あるいは理論的な研究がなされている からである.そこで,我々はこの問題を解決すべく,バルク水と界面水を区別して取り扱うアプローチを提案する.このアプローチを,脂質膜−シリカ −水の系のDPDシミュレーションに対して適用したところ,シリカに脂質膜が吸着する現象をうまくモデル化することができた.
<Keywords:> Dissipative particle dynamics, DPD, interface, water, lipid membrane
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/16/1/16_2017-0003/_article/-char/ja/

SCCJ Caf Season 5 生命現象の分子科学(4)「新しい量子ビーム・ミュオン分光と理論的アプローチ」 [Published online J. Comput. Chem. Jpn., 16, A13-A18, by J-STAGE]

[Published online Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.16, A13-A18, by J-STAGE]
<Title:> SCCJ Caf Season 5 生命現象の分子科学(4)「新しい量子ビーム・ミュオン分光と理論的アプローチ」
<Author(s):> 飯沼 裕美, 大場 優生, 河村 成肇, 高妻 孝光, 菅原 洋子, 高柳 敏幸, 立川 仁典
<Corresponding author E-Mill:> takamitsu.kohzuma.qbs(at)vc.ibaraki.ac.jp
<Abstract:> 近年,陽子加速器及び関連する量子線テクノロジーの進展がめざましい.陽子加速器は,陽子を加速し,水銀のようなターゲットにぶつけ,核破砕によって,中 性子,π中間子,ミュオンなどの量子線を作り出される.この中でも,高い物質透過性を有する中性子とミュオンが,X線では届かない様々な物質・生 命研究へと展開されつつある.本稿では,ミュオンという新しい量子線を紹介し,化学への応用という観点から,計算機科学との関係について紹介す る.
<Keywords:> Quantum Beam Science, Muon, J-PARC, Biological Molecules
<URL:> https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/16/1/16_2017-0006/_article/-char/ja/